持続的な賃上げを実現する方法
少子化対策の短期的な対策はもちろん子育て家庭への経済的支援になると思います。 高度成長期やバブル期など、将来賃金の右肩上がりが予想された時代には、子供を産んでも何とか育てられるだろうという楽観的なものの見方が成立していました。 しかし、この20年間賃金が横ばいの日本ではそのようなアブナイ予測を信じる人はいません。 根本的な問題解決にはインフレ率をカバーした上で2〜3%程度の実質賃金上昇を可能にする経済基盤の安定が不可欠になります。 将来賃金が上がるという見通しがたたなければ、なかなか子供を増やそうという気分にならないのは当然です。 先進国の中でこの20年賃金が上がっていないのは日本だけですが、他国ではどのようにして賃金上昇を実現しているのでしょう? はたしてそんな方法があるのでしょうか?
IMFのデータによれば、この20年継続的な賃上げを実現している国は、例外なく財政収支(プライマリーバランス)にこだわらず、国債ベースの財政拡大を継続しています。
企業は銀行融資を受けて先行投資をおこない、それによって業績を拡大、成長しますが、国も同じように国債を発行した財政出動によりGDPを拡大し経済成長を実現します。
この20年間、他の先進国と比べ、日本は国債による先行投資をほとんどおこなっていないので、GDP、経済規模がほとんど拡大せず、従って賃金も上がるはずがありません。
他の先進国と同じように国債を使った先行投資である財政拡大が必要だったのです。
でも国債残高が増えて政府債務が拡大することに対し、財務省はことあるごとに警鐘を鳴らします。
本当に国債残高を増やしてはいけないのでしょうか?
国債残高は現在1200兆円ですが、その半分の600兆円は日銀が保有しています。
政府と中央銀行(日銀)は統合政府として一体のものとみなすことが国際標準の考え方なので、日銀が保有する600兆円の国債はすでに政府自身が所有、すなわち返済したものと考えても問題ありません。
残りは600兆円です。
さて、企業が銀行融資を受けて先行投資をする場合、業績が安定していれば、利子だけ払って、元本は借り換えしてそのまま置いておくことは普通の話です。
その企業に借金に見合う資産があれば、銀行もそのまま借りてくれる方が都合がいいので借り換えをOKします。
日本政府にも換金可能な流動資産が600兆円あります(そのほかにも不動産など動かしにくいものが数百兆円)。
つまり国債残高600兆円は問題なく、利子だけ払っておけば良い状態だということになります。
日銀の国債買取スキームにより、すでに日本の財政再建は終了していることになるのです。
このような考え方はすでに100年前に世界大恐慌からいち早く日本を脱却させた高橋是清の考え方です。
彼は単純な財政拡大論者ではなく、むしろ世界大恐慌から脱出した後も必要以上の財政拡大を迫る軍部の要求をはねのけて226事件で暗殺されることになります。
つまるところ、現在の日本の財政に致命的な問題はありません。
したがって、防衛や少子化対策など将来の日本を守るための投資は国債を基本としておこなうべきであり、増税などもっての外です。
それでも、財政収支が気になるなら国債は借り換えにして、返済に充てている16兆円を削れば良いのです。
しかも2022年の税収は予定を大幅に上回り7兆円も上振れしています。
円安による輸出産業の大幅な収益増と食料品、エネルギー価格上昇による消費税の増収ですから当分続くでしょう。
なにかとメディアがもてはやすお隣の大国、中国も財政収支は赤字ですがちっとも気にしていません。
平均すると日本人は一人当たり生涯で4000万円以上の納税をおこないます。
少子化でこの税収を失うくらいなら、政府は増税するより思い切った少子化対策を打つべきではないでしょうか?
もちろん増税なしで。
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